サブウェイ

ファーストフードのほう。この店、2年前NYに一人旅したとき以来のトラウマがあります。あの時は英語が全く話せず一つのサンドウィッチをオーダーするのに15分くらいかかっていたんです。店員がこれでもかっていうくらいに愛想が悪くて小心者の俺は心底傷ついていたんです。久しぶりに入った店の匂いはそれを思い出させてくれました。
さて、入店すると女の人が「すごい荷物ね!!あらまあほんとにすごい荷物!!ひゃひゃひゃ!!」とすごい勢いで話しかけてきました。Friendlyすぎだろ、とそのときは思いました。まあ実際すごい荷物なので「あ、どうも、ははは」と愛想笑いを返しました。
注文を始める俺、横から「店員さん、デイリースペシャルって言ってるけど彼は本当はこっちが欲しいのよ!!あ、トマトは抜いてあげてね、彼食べられないから。オリーブは体にいいのよー!!」と俺に代わって注文してくれる彼女。自分で頼まなくていいなんてサブウェイも親切になった・・・訳がなくてね。彼女は精神に異常をきたしているのだと分かりました。店員さんも困り顔です。
席に着き食べようとすると「一緒に座っていい?」と言う彼女。「いやです。」という俺。勝手に座る彼女。本を出し「本読むからどいてください。」という俺。「私も読むから良いの。」という彼女。しょうがないので何も言わず席を立ち外に出ました。
"What a fucking bastard!! Motherfucker!! U motherfucking son of a bitch. U fucking rude!! It's rude!!!!"
言われました。アメリカ来てからジョーク以外でこんなにめちゃくちゃに言われたのは初めてです。
腹は立ちましたが彼女を他の人と同じように判断することはしませんでした。しょうがない。そう思いました。
障害者を差別するやつなんか最低だと思っています。少なくとも自分ではそう思っていると思っています。小学生のときに障害者の子供を持つ親の苦悩をつづった冊子を読んで以来差別はしたくないと思い続けてきました。でも実際今日俺は彼女に対して恐怖心とともに侮蔑をおぼえました。理性とは違うところ、本能に近い部分で本当はそういう気持ちが俺にもあります。それを知って失望しました。
精神鑑定のことを考えました。精神に異常をきたしていたから「しょうがない」。それが精神鑑定です。めちゃくちゃ難しいですよね。精神の異常度なんてものはどうやっても数値化できません。容疑者が嘘をついているかもしれません。さらにそれをどの程度判決に反映するか、その問題もあります。
精神鑑定、他の言葉で言えば「普通ではないからしょうがない」ということです。それは良くも悪くも精神障害者を普通とは「違う」存在として扱うということです。どんなに差別を否定し奇麗事を並べようとそのシステム自体が矛盾を生みます。
大事なのは俺みたいに「俺はそういう差別大嫌いだから!!やめろよ!!」ということを言い、自分が良い人間だと思い込むことではありません。自分の心の中にある根源的な「自分と違うものへの差別」を自覚しなければ始まりません。