Mission impossible4

「じゃあね。」「ああ、連絡しろよ。」
空港に行くMAXの駅の前でのJeroenとの別れは淡白なものだった。涙もなく彼はMAXに乗り込み去っていった。一年間の友情が終わった。
訳がなかった。ここからMission Impossible気取りが始まった。Jeroenには内緒で次のMAXに乗り込み俺ら3人も空港へ向かう。乗換駅でJeroenが乗ってくるはずだからそこで気付かれないようにするのが一番大事だ。
と思ったらありえないところでやつは乗ってきた。間違えたみたいだ。慌てる俺ら。
「あ、目が合った。終わったわ。」矢野ペペ
まあもう気付かれただろうと思いながらも空港に到着。物陰からJeroenのチェックインの様子を伺いタイミングを見計らう。
しかし、見失った。大変だ。ドッキリがめちゃくちゃだ。
何と同じ車両に乗っていたのにJeroenは気付いておらずさっさとセキュリティーを通過してしまっていたのだ。呼ぶ俺ら、びっくりするJeroen。終わった。あんな淡白な偽バイバイが現実になってしまうなんて・・・ちゃんとさよならを言わせてくれ!!!!
と思ったら意外と奴はすんなり出てくることができた。
こうして俺らはMission Impossibleを遂行した。
カフェで話す。泣き出すペペ。あまりに予想外の展開。不意打ちなんてずるい・・・俺ももらい泣き。
辛かった。何とか別れたものの帰りのMAXでJeroenからの手紙を読んだら今度は声を出して泣いてしまった。やばすぎる。
"I know I am a bad person."というところを読んだらもう我慢できなくなってしまった。今までの思い出が一気に押し寄せてきた。お前は完璧じゃないしだめなところもあるかもしれない。でも俺だって同じくらいだめなやつだし、だめなところも同じくらいある。矢野ペペだってそうだ。完璧じゃないものどうしだからこそ大変なこともあったし同じくらい楽しいこともあったんだ。そして何より完璧じゃないからこんなにいろいろ思い出があって今こんなに悲しいんだ。
今までの別れの中でも3本の指に入る悲しさだった。転校するとき、彼女と別れるとき、悲しかったけどこんなに親しいやつと国を隔てるなんてことは未だかつてなかった。もう会えないかもしれないと思うと信じられなかった。
約束をした。10年後にまたオレゴンを旅行するという約束。俺は愛車のレクサスを日本から、Jeroenはオランダの超高級車を、空輸で持ってきてドライブする。ヤンキーのたわごとみたいだけど実現させたい。また会いたいな。
この2週間、俺たち3人は毎日23時間以上一緒にいた。兄弟以上のものがあった。またこんな風に3人でいつか旅行できる日が来たら良いな。
今はまだ悲しすぎて手紙を読み終われない。日本に帰ってからになるかもしれない。
こんなに素晴らしい親友を得ることができて俺は幸せだ。
お決まりの「オランダに行っても忘れないでね!!」みたいなことは誰も言わなかった。そんな事言わなくてもお互いのことを忘れるわけがないとみんな分かっていたから。